初回面談の際
『ケアマネは自分の役割をしっかりと説明しなければならない!』
研修でもそう習ったし、どの本を読んでも
ケアマネの役割、つまり
『出来ること』と
『出来ないこと』をしっかり説明しろ!と書かれてある
ところがケアマネほど守備範囲が不明確な職種も珍しい
今日はケアマネがやっている業務外の仕事について考察してみる
目次(もくじ)
①介護保険制度の範囲におけるケアマネジャーの仕事範囲
初回の契約の際に、重要事項説明書においてケアマネの仕事範囲について説明する
- アセスメントの実施
- ケアプラン作成
- サービス担当者会議の開催
- モニタリングの実施
- 介護相談
- サービス調整 etc・・・
これらが、ケアマネジャーの業務として代表的なものであろう
しかし、ケアマネの仕事がこれだけで済むのであれば、日々平穏な日常が送れる事であろう。そうではないから多くのケアマネは疲弊しているのだ・・・
重要事項説明書で、ケアマネジャーの仕事範囲を説明しながら
『ケアマネの仕事ってこんなもんじゃないよな〜』
『これらの仕事だけ済むのなら苦労はねぇぜ!』
と心の中で矛盾を感じるのである!
②他の職種との比較
介護保険制度内における他の職種と対比した場合
ヘルパーや訪問看護などの訪問系サービスも、デイサービスやデイケアなどの通所系サービスも、まずサービス提供時間が定められている。つまり、スタートとゴールが明確なわけだ。その時間は事業所の運営規定やケアプランに明確に位置付けられており、提供時間内にサービスを行うことになる。
また、業務があいまいになりやすいヘルパーなどは、明確に出来ることと、出来ないことが示されており、介護保険で認められないものは実費(保険外)の対応となる。
ところが、ケアマネ(介護支援専門員)にはサービス提供時間と言う概念自体が存在しない。提供時間によって報酬が変わることもないし、ケアマネの自費サービスなども存在しない!
もちろんケアマネにも営業時間は存在するが、人の生活は24時間365日待ったなし!なわけであるから、時間外対応などは珍しいことではない
つまり、ケアマネの自費サービスが無いということは、ケアマネが業務外・介護保険外のこともボランティアで行っているという証拠である。
行政はヘルパーやデイサービスで、保険外のサービスを提供すると『それは認められません!』と氷のような顔で塩対応するくせに、ケアマネが保険外の仕事をしてても見て見ぬふりをする・・・
③ケアマネが業務外で行っている仕事内容
例えば
- 公共機関・金融機関への手続き代行
- 病院の入院手続き等
- 認知症高齢者の捜索
- ゴミ屋敷の片づけ
- 通院時の付き添い
- 住宅・賃貸のお世話
- 消費者被害の対応
- 通帳管理(記帳や引き出し、預入)
- 薬の管理
- 日用品の買い物
- 郵便物の確認、仕分け
- 近隣住民とのトラブル対応
- 入院時の必要部物品準備(洗濯物)
- 公共料金の支払い
- 救急車の同乗
まだまだあるが、とりあえず代表的なものをあげてみた。
例えば・・・
ケース①
『利用者が救急搬送されます!誰か救急車に同乗してください!』
『何?誰もいない? はい!ケアマネさん乗って!』
強制連行・・・
帰りは自腹でバスかタクシー・・・
ケース②
病院に入院しました
『保険証や衣類などが無い! 誰か取ってきて!』
『何?家族がいない? はい!ケアマネさん取ってきて』
こんな具合である
ケアマネの仕事じゃないと分かっていながら、やる人がいないから、仕方なくやっているケースが多い
『金なし 家族無し 地域交流無し』
の3拍子揃った利用者なんかは、まずケアマネがやらざるを得ない
④ケアマネが業務外の仕事をしなくてはならない背景
理由その① 独居高齢者 認知症高齢者 経済困窮者の増加
上記ような仕事は、本来、利用者や家族の役割だ!しかし、独居高齢者や認知症高齢者の増加によって
利用者自身では対応できないケースや家族も遠方に住んでいたり、そもそも協力してくれる家族がおらず、誰もやってくれる人がいないことが多い!
また、そんなケースに限って経済的に余裕がなく、自費や保険外サービスを利用することは出来ない。
そうなったときに『誰がやるんだ?』
『ケアマネでしょ!』
となってケアマネが丸抱えしているケースが多いのだ!
理由その② ケアマネは生活を支えているため
ケアマネは利用者の生活を支えているため『私がこの利用者を何とかしなくちゃ!』と責任を感じて、上記のような、どう考えてもケアマネの仕事じゃないことをしている人が多い!
また そこまでの責任は感じていないにしても誰もやってくれる人がおらず、仕方なしにケアマネがやらざるを得ない状況になっていることも多々ある。
⑤二極化するケアマネージャー
ケアマネの仕事は上記のように線引きが難しい為、業務外の仕事で疲弊しているケアマネが少なからずいる。
ところが、線引きが難しいゆえにケアマネジャーは二極化していると言える。
割り切りケアマネ
何度も言うようにケアマネは介護保険上は、やるべきことが明確に定められている。ところが実態は利用者の生活実態や家族などの要因によって、明確に線が引けない所がある。
しかし、一方で『私の仕事はここからここまで』『それはケアマネの仕事ではない!』と割り切って仕事をしているケアマネもいる。
それが良いとか悪いということではなく。利用者の置かれている状況がどうあれ、自分の仕事範囲を明確にしているわけだ。
このようなケアマネは自分の仕事をビジネスライクで割り切っているので
- 自分以外の人を巻き込む力(人に押し付ける力)
- チームで支える力
- 社会資源の引き出しの多さ
に長けていることが多く。『自分でやれないのであれば、どうすればよいか?』を考える習慣があるともいえる。つまり『自分の仕事はここまで!』それ以外の仕事は、誰かにお願いする(押し付ける)
という考え方
人生を背負い込むケアマネ
真面目なケアマネほど『私がこの利用者を何とかしなければ!』と利用者の生活や人生を抱え込んでしまい、深みにはまってしまう。
このようなタイプのケアマネは、まさにケアマネ兼家族のような関わりとなり、上記のような範囲外の仕事もこなしていく。
そして、疲弊してバーンアウトしていくこともあるのだ
利用者にしてみると、こんな熱い思いを持ったケアマネに巡り合えて幸せだという考え方もあるが、一方で
- ケアマネ自身が早期に疲弊してしまう
- 1人で抱え込み、社会資源を巻き込む力がつかない
- 1人の利用者に時間を費やすあまり、他の利用者にしわ寄せが行ってしまう可能性がある
- 担当ケアマネが変更となった場合、後任にも同様のものを求められてしまう
というマイナスの側面もあるので、注意が必要である。
⑥業務外の仕事をしているケアマネの声
業務外の仕事で疲弊しきっているケアマネに対して偉い役人や頭の固い上司は
- それはケアマネの仕事ではありません
- 地域にある社会資源を活用しなさい
- 無ければ社会資源をつくりなさい
とエラそうにおっしゃられる
しかし・・・
『地域のボランティアなんてどこにあるんだよ おい!』
『新たな社会資源開発、そんな時間がどこにあるんだよ おい!』
『自分の仕事でないと分かっていても、誰もやらないから自分がやってんだよ おい!』
今、まずケアマネにかける言葉は、そういう冷たい言葉ではなくて
『あ〜ありがとうケアマネさん 業務外の仕事もケアマネが好意でやってくれているおかげで利用者の生活が成り立っているよ』
『なんとかこっちも社会資源の整備ができるよう努力するので、なんとかそれまでは頑張って利用者の生活を支えてあげてね!』
である。
そうすればケアマネも
『まあ、そこまで言うのなら、できる限りやろうじゃないか!』
っとこうなるのである
ケアマネは誰も取らないようなボールに飛びついているんだ!
いや、自分の守備範囲ではないと思っても、誰も取ろうとしないから飛びつかざるを得ないんだ!
そんな泥だらけでボロボロのケアマネに対して
ボールに飛びつこうともしない人間がとやかく言うべきでない!
まして、エラーしたからと言って責めるべきでもない!
かけ声は『ナイスプレー』だ!
・ケアマネが業務外の仕事をせざるを得ない背景の1つに、独居高齢者や認知症高齢者の増加がある。
・ケアマネの仕事は線引きが難しいがゆえに、あっさりと割り切っているケアマネと、利用者の人生を抱え込んでしまっているケアマネに二極化される。
・ケアマネが疲弊してバーンアウトする前に、ケアマネ業務を見直す時期に来ている。